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分譲マンションにおける「管理組合」は何をするための組織なのでしょう? 

分譲マンションにおける「管理組合」は何をするための組織なのでしょう?

管理組合というのは区分所有法に基づく団体で、区分所有者(マンションの個別オーナー)全員で構成され、共有財産である共有部分の維持管理を行っています。管理組合の役割は幅広く、大まかに言うと建物や敷地、さらには付属施設などを管理して良好な状態に保ち、マンションの区分所有者の生活が円滑に送られるよう維持すること。しかし、マンションオーナーが管理組合を構成する以上、このような活動をする時間がない、あるいはやりたくても知識やノウハウがないからできない、という意見があってもっともだと思いますが、そういった場合は総会や理事会などで基本的な方針だけを審議・決定し、大部分の事務は管理会社に業務委託することになります。具体的な例を出せば、マンションの外壁の塗装が必要になったとして、管理組合ではそれを行う時間も、ノウハウも技術もありません。ですから、総会や理事会で「塗り替え工事を行いましょう」という基本方針だけ決定し、あとは管理会社に「塗り替えを行うので業者の手配や日時の決定、あるいは金額の提示をしてください」というように丸投げするわけです。そうして管理会社からプランが上がってくればそれを審議・承認する。そうして実際に塗装工事が行われればそれの最終確認を行います。管理組合は、マンションの住民による自治をするための組織、と言えば分かりやすいでしょう。

管理組合の目的と役割について

管理組合を組織する目的は、組合員(住民)の大切な財産であるマンションを維持管理すること。そもそも、マンションには各区分所有者の固有財産である「専有部分(住戸)」と、全ての区分所有者(住民=組合員)共有の財産である「共用部分(共用部)」があります。共用部分とは、マンションの廊下やエレベーター、非常階段、エントランスといった目に見える部分のほか、給排水や電気やガス配管などのライフライン、集会場や駐輪・駐車場、ゴミ置き場などの付属施設、またマンション敷地内の公園など、住戸以外の全ての場所・施設となります。

管理組合の主な役割は、これらの共用部分を維持管理し、全住民が快適に暮らせるように環境を整えることで、マンション全体の価値を維持し高めることにあります。必然的に組合員はその活動を支えるため、「管理費」や「修繕積立金」を負担し、管理組合は理事会で選定・契約した管理会社と打ち合わせながら、具体的なマンションの管理業務を管理会社に委託していくことになります。さらに、ゴミ置き場でのゴミの出し方、駐輪場や駐車場の利用ルール、マンション内でのペット飼育のルールなど、住人の間でトラブルが起こらないようにルールを定めていくのも管理組合の仕事に入るでしょう。国で言えば国会と政府が合体したような、マンションでは一番権限のある組織と言うことになります。

そもそも管理組合って必要なの?

 

そもそも、マンションの管理組合って必要なのでしょうか。仮に、管理組合がないマンションがあったとしましょう。そこでは、住民が自由気ままに生活を送っており、通常のマンションで定められているような窮屈なルールはありません。ゴミは市から指定された曜日に各自がゴミ捨て場に持っていき、出し方のルールなども決められていません。共用部は誰も掃除せず、住民は「誰かがするだろう」くらいに思っています。駐輪場の置き方もばらばら。オーナーにはペットを飼っている家も多く、その糞尿がマンションの共用部にある始末。でも、みんな自分の住戸の前でない限り、知らんふりをしています。皆がそれでいいと思っているからです。そしてある日、ある住人が飲料水が茶色く染まっているのに気がつきました。ですが、貯水槽の清掃とか点検とか、誰が管理しているのか分からず、かといって自分でも点検できないので、市の水道課に電話したところ、マンション内の問題なのでマンションで対処しろとの指示。住民はどうしていいか分からず、結局は放置しました……。

あくまでフィクションですが、実際に管理組合がなければ、もっと面倒なことが起こってきます。とくにライフラインの不備は死活問題。そのときに慌てて自治体を結成しても手遅れなのです。マンションは賃貸物件と違ってオーナーや大家がいません。ですから、たとえ雨漏りがあっても苦情を言う先すらないのです。つまり、大家の代わりをする組織が管理組合と言っても過言ではないでしょう。

管理組合、こんなことしてます

マンションの管理組合では以下のような業務を行います。マンションによって、あるいは管理組合によって細部は異なりますが、概ね同様と考えて良いでしょう。以下は国土交通省が示しているガイドライン「マンション標準管理規約(単棟型)」から抜粋しています。

1. 管理組合が管理する敷地および共用部分等の保安、保全、保守、清掃、消毒およびゴミ処理
2. 組合管理部分の修繕
3. 長期修繕計画の作成または変更に関する業務
4. 建物の建替えに係わる合意形成に必要となる事項の調査に関する業務
5. マンション管理適正化法第103条に定める、宅地建物取引業者から交付を受けた設計図書の管理
6. 修繕等の履歴情報の整理および管理等
7. 共用部分に係わる火災保険その他の損害保険に関する業務
8. 区分所有者が管理する専用使用部分について管理組合が行うことが適当であると認められる管理行為
9. 敷地および共用部分等の変更および運営

10. 修繕積立金の運用
11. 官公署、町内会等との渉外業務
12. 風紀、秩序および安全の維持に関する業務
13. 防災に関する業務
14. 広報および連絡業務
15. 地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成
16. 管理組合の消滅時における残余財産の清算
17. その他組合員の共同の利益を増進し、良好な住環境を確保するために必要な業務

いかがですか。たくさんの業務を行っていることがお分かりでしょう。

管理組合を運営する理事

 

マンションの管理組合は区分所有者である住民全員で構成され、その最高意思決定機関である「総会」に基づいて、マンション内のあらゆる決議を行います。しかし、何かを決める際に毎回全員が集まるというのも難しいので、総会では管理組合を代表する理事を数名選出し、理事会を構成します。

総会で選出された理事および理事会は、総会の決議に基づき、管理組合の基本的な運営方針などを検討し、決定します。また、個々の理事は日々の生活の中で発生する様々な問題を持ち寄り、各組合員(住民)の意見や要望を吸い上げ、理事会でそれらを発表し、検討します。そうして理事会の中で方針やルールを決定したり、マナーを周知徹底したり、組合相互の意見を調整することになるでしょう。理事は問題を検討したり、決定を実現したり実行に移すために、理事会や総会を定期的または不定期に開催します。

具体的な業務としては前述の業務のほか、マンションの修繕計画の作成・変更、マンションの点検・チェック、マンション管理会社など業者との連絡・交渉・契約、マンション管理規約案や使用細則案の作成、住民からのクレーム対応、イベントの企画・実施などがあります。マンションによっては夏祭りや餅つきなどの行事が開催されているところがありますが、こうしたイベントがきちんと行われているマンションは、管理組合がしっかりと運営されています。

理事会は総会で選出されると言いましたが、実際には誰もが嫌がって公平な選出が難しいことから、輪番制やくじ引きで決められているところが多いようです。任意はたいてい1年~2年と言ったところでしょう。

 

マンション管理規約とは?

マンションに入居すると、必ず「マンション管理規約」という冊子を配られ、同意を得ることが求められます。これは、簡単に言えばマンションで生活を送るための住民のルールであり、管理組合の活動の根本規約にもなっているものです。マンションによってこの規約は異なっていますが、日本の場合は国土交通省がガイドラインとして出している「マンション標準管理規約」がベースになっていることがほとんど。内容としては専有部分と共用部分等の範囲や持分の割合、専有部分と共用部分等の使用方法、管理費・修繕積立金の負担方法など、管理組合の組織や運営方法、義務に違反した場合の措置などが定義されています。

このマンション管理規約は、制定されるために総会の特別決議(組合員総数の4分の3以上及び議決権総数の4分の3以上の議決)を経る必要があるとされており、新規分譲の場合は分譲会社が原案を作成し、それを区分所有者全員が購入時に同意することでひとまずの制定を決定するのが一般的な方法。おそらく、それを熟読して同意している人というのは少ないのではないでしょうか(ちなみに、国土交通省の「マンション標準管理規約」は総頁数が40頁ほどありますので、どれだけ細かい部分まで定められているかがお分かりでしょう。その後、管理組合の自治の中で必要な事項を変更することもできますが、たいていは分譲時のままになっているケースが多いようです。なお、変更する場合は変更案を理事会が作成し、やはり総会の特別決議で賛成を得ることが必要です。また、廃止にあたっても同様の特別決議が必要になります。

管理費と修繕積立金の違い

マンションに入居すると、区分所有者(住民)は毎月管理費と修繕積立金を管理組合に支払わなければなりません。「二重に取られているのではないか」という住民が必ずいますが、この2つは使用目的が異なるのです。

管理費というのは、マンションの日常管理の用途で徴収されます。管理費の具体的な使途には以下のようなものがありますが、ほとんどのマンションでは管理を組合が行うのではなく管理会社に委託していますので、そのための費用が多くを占めます。

・共用部分設備の保守・管理費や運転費(管理会社)
・清掃費やゴミの処理費用( 〃 )
・管理員の人件費( 〃 )
・植木・植栽の管理費( 〃 )
・管理組合の運営費、備品費、事務用品費、通信費、その他の事務費
・共用部分の水道光熱費
・マンションの広報やイベントにかかる費用
・公租公課(税金)
・火災保険や損害賠償保険などの保険料

これに対し、修繕積立金というのは、将来的に必要となる修繕のための工事や、共用部分のバリアフリー工事、あるいは改修工事、建物の検査などに備えて積み立てられるものです。マンションは必ず老朽化しますし、その時になって工事費用を集めても、多額の費用の場合は集められないことも考えられます。そのために前もって貯金をするわけですね。当然、その使用に関しては、管理組合の承認が必要になってきます。

理事によるルール制定

マンション管理組合の理事会が行っている活動のうち、最も重要なことのひとつが「ルール作り」です。具体的な例を挙げて、その活動を見ていきましょう。

マンションにはたいてい「駐輪場」が用意されていますが、あるマンションで、住民から「駐輪場に自転車が多すぎて自分の自転車が置けない。盗難にも遭いそうだ」との苦情が起こったとします。そこで理事会はまず、その駐輪場に行き、現状を確認します。そして「確かに、持ち主が転居して放置されているような自転車も多い。これでは防犯上よくない」ということになれば、それをどう解決していくかを検討します。

そして「自転車を登録制にしよう。登録シールの貼られていない自転車は処分しよう」という案が出されたとします。すると理事会では管理規約もしくは使用細則にそのことを追加するなどの「改善案」を作ることになります。理事会の仕事としてはひとまずここで終わり、その案に対して賛成するか否かは「総会」の役割になります。総会で賛成・承認されれば、今度はそのルールを守らせるための方法を検討し、周知徹底を行っていくことになります。

このように、理事会は住民同士がトラブルを起こさないよう、また便利で快適な生活を送れるようにルール案を作っていくのが大切な役目であり、これがなければ、マンションの生活は乱れ、無法地帯と化してしまうことになります。実際に、中古マンションを購入すると決めたら、駐輪場を見てみると、管理組合がきちんと活動しているかが分かりますよ。

理事会と総会、どう違う?

マンションの管理組合には大まかに分けて「総会」と「理事会」とがあります。総会はマンション管理組合の最高意思決定機関であり、原則としては区分所有者全員が参加し、管理規約や使用細則などマンションの基本ルールについて、マンション管理会社との管理委託契約について、共用部分の補修や長期修繕計画について、さらには建物の大規模な改修工事や建て替え決議についてなど、マンション管理の重要事項を全て決定する権限を持っています。ただし、全員が参加するとなると意思決定がうまくいかず、話し合いがいつまで経ってもまとまらない可能性が出てきます。そこで住民の代表を選出し、その代表者によって細部を決めようというのが理事会です。

総会の場合、定期総会(通常総会)は年1回しか開催されませんし、あらかじめ管理組合員に通知された議案についてしか決議することができません。そのため、実際に総会議案の意思決定に基づいて方針を案にしたり、具体的に問題を処理し解決していくのは理事会の仕事になります。一般の企業で言い換えるなら、株主総会に当たるのがマンションの「総会」、そこで選出される役員に該当するのが「理事」、役員会に該当するのが「理事会」ということになります。企業では役員が最も権限があるように錯覚しますが実はそれよりも権限があるのが「株主」。マンションも同じように、理事会より総会のほうが権限を持っています。

 

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