管理組合

マンションの管理組合

マンションの管理組合には大まかに分けて「総会」と「理事会」とがあります。総会はマンション管理組合の最高意思決定機関であり、原則としては区分所有者全員が参加し、管理規約や使用細則などマンションの基本ルールについて、マンション管理会社との管理委託契約について、共用部分の補修や長期修繕計画について、さらには建物の大規模な改修工事や建て替え決議についてなど、マンション管理の重要事項を全て決定する権限を持っています。ただし、全員が参加するとなると意思決定がうまくいかず、話し合いがいつまで経ってもまとまらない可能性が出てきます。そこで住民の代表を選出し、その代表者によって細部を決めようというのが理事会です。

総会の場合、定期総会(通常総会)は年1回しか開催されませんし、あらかじめ管理組合員に通知された議案についてしか決議することができません。そのため、実際に総会議案の意思決定に基づいて方針を案にしたり、具体的に問題を処理し解決していくのは理事会の仕事になります。一般の企業で言い換えるなら、株主総会に当たるのがマンションの「総会」、そこで選出される役員に該当するのが「理事」、役員会に該当するのが「理事会」ということになります。企業では役員が最も権限があるように錯覚しますが実はそれよりも権限があるのが「株主」。マンションも同じように、理事会より総会のほうが権限を持っています。

理事によるルール制定

マンション管理組合の理事会が行っている活動のうち、最も重要なことのひとつが「ルール作り」です。具体的な例を挙げて、その活動を見ていきましょう。

マンションにはたいてい「駐輪場」が用意されていますが、あるマンションで、住民から「駐輪場に自転車が多すぎて自分の自転車が置けない。盗難にも遭いそうだ」との苦情が起こったとします。そこで理事会はまず、その駐輪場に行き、現状を確認します。そして「確かに、持ち主が転居して放置されているような自転車も多い。これでは防犯上よくない」ということになれば、それをどう解決していくかを検討します。

そして「自転車を登録制にしよう。登録シールの貼られていない自転車は処分しよう」という案が出されたとします。すると理事会では管理規約もしくは使用細則にそのことを追加するなどの「改善案」を作ることになります。理事会の仕事としてはひとまずここで終わり、その案に対して賛成するか否かは「総会」の役割になります。総会で賛成・承認されれば、今度はそのルールを守らせるための方法を検討し、周知徹底を行っていくことになります。

このように、理事会は住民同士がトラブルを起こさないよう、また便利で快適な生活を送れるようにルール案を作っていくのが大切な役目であり、これがなければ、マンションの生活は乱れ、無法地帯と化してしまうことになります。実際に、中古マンションを購入すると決めたら、駐輪場を見てみると、管理組合がきちんと活動しているかが分かりますよ。

 

理事会による建物・設備の点検&修繕

どんなに新しくきれいなマンションでも、時を経るごとに年々劣化していくことになります。だからといって何もしないでいると劣化が早く進み、マンションが老朽化して資産価値が下がることになります。そこで管理組合および理事会の大事な役目として、マンションの点検・修繕業務があります。

まず、理事会はマンションの法定点検と任意点検を行う必要があります。法定点検は構造上の重要な点検など、国や都道府県への点検結果の報告が定められているもので、通常この業務は管理会社に委託されています。また任意点検というのは日常生活の上で必要な細部のチェックのことであり、これについては理事会が行うケース、理事会が委託している管理人が行うケース、管理会社が行うケースと様々。理事会はそうした法定点検と任意点検の結果に基づき、修繕や大規模修繕を決定していくことになります。

細かい修繕の場合は理事会の権限で行いますが、マンション全体の資産価値に関わるような大規模修繕は総会の承認を得る必要があります。理事会で決定すると業者の選択をし、臨時総会や住民の任意参加による工事説明会などを経て予算を決定、総会の承認が得られれば実際に工事の日程を決めて委託することになります。

理事会はその後、修繕積立金の中から支払っていくことになりますが、不足した場合には住民から一時金を徴収するなど、その方法も決めなくてはなりません。

理事会によるイベント運営

マンションの自治がどれだけしっかり行われているかを計る物差しとして「イベントの実施」が挙げられます。例えば納涼祭や歳末の餅つき、中には住民による花見や運動会などを行っているマンションもあり、その熱心さには驚かされることがあります。

イベントは行わないマンションも多いですが、実施することによって住民同士の絆が深まったり、コミュニケーションが活発化したり、いったメリットが多々あります。また、マンションは新築分譲時には若い世代が多いのですが、そのうちに高齢化し、中には単身で住む世帯なども現れます。こうした世帯の孤独死を防ぐ意味でも、どこに老人が住んでいるか、介護が必要な人はどこにいるか、万が一マンションが火災になった時には優先的に避難誘導をしなければならないのはどこかなど、マンション全体の情報を共有するうえでも、こうしたイベント活動が不可欠になるのです。

理事会のほうとしてはその準備や設営、運営や後始末など面倒なことも多いですが、イベント活動によってマンションのルール遵守の意識も高まり、生活しやすい環境を作り出せる、また、理事会の活動に興味を持ってもらって、賛同を得やすくする、時期の理事を選出しやすくするなどのメリットもありますので、機会を設けて行うべきでしょう。最近は「隣に誰が住んでいるか知らない」というマンションも少なくありません。防犯意識を高める上でも、こうしたイベント実施は効果があるようです。

管理会社との違い

マンションにとって管理組合は不可欠ですが、管理組合は住民によって構成されており、この住民が管理全般を行うのは事実上不可能です。それぞれの世帯が仕事を持っていますし、そもそも管理に必要なノウハウがない。マンションの水道設備が壊れたからといってそれを点検する人も修理する人も住民から出すというのは難しい。そのために必要なのが「管理会社」です。

管理会社は管理組合から委託を受け、大きく分けて4つの管理業務を行います。1つ目は事務管理業務。これは管理組合の会計収入および支出の調査、出納、あるいはマンションの維持または修繕に関する企画または実施の調査などが具体的な業務。そして2つ目は、管理員業務。受付等の業務、点検業務、立会業務、報告連絡業務など、要するに管理人としての業務です。そして3つ目は清掃業務。これは共用部の清掃業務になりますが、毎日もしくは日常的に(2日に1度など)行われる清掃と定期的に行われる清掃とがあり、後者はエレベーターの清掃やエントランスのワックスがけなどがそれに該当します。そして4つ目は建物設備管理業務。これは建物、エレベーター、給水設備、浄化槽、消防用設備、機械式駐車場などを定期的に点検し、メンテナンスを行う業務です。

これらを行う管理会社は、マンションを分譲した不動産会社が通常は決めていますが、実際には管理組合に決定・委託する権限があります。委託費が高い場合には見直しや業者の変更なども可能ですので、管理会社の言いなりにならないためにも理事会がきちんと管理を行っていくことが重要です。

住宅金融支援機構を利用する

どのようなマンションも必ず老朽化し、いつかは大規模な修繕工事が必要になりますが、そのための修繕積立金の徴収と管理は、管理組合が行うには意外に面倒です。徴収そのものは銀行振込や自動引き落としによる場合が多いようですが、その引き落とした後の管理をするのは、管理組合か管理会社。いずれの場合も大きな金額になる上、たいていの住民はその管理まで目が行き届かないため、管理会社の倒産や最悪の場合持ち逃げなどの不正が行われる可能性もあり、注意が必要です。

こうした修繕積立金を適切に管理・運用するため、住宅金融支援機構のマンション修繕債券積み立て「マンションすまい・る債」を利用する手があります。「マンションすまい・る債」の積み立ては毎年1回ずつ行われ、継続して最高10回(10年)まで行うことが可能。1口50万円として複数口積み立てる形となっており、管理組合は住民全戸の積立金を計算し、「マンションすまい・る債」に何口積み立てるかを自由に決定することができます。これを行うことにより、積立金が盗難に遭うことも防げますし、債券そのものを無料で預かってもらえるので火災や盗難から守ることができ安心。また、一口につき2000円から最高7000円までの利息を受け取ることができますので、ただ単に積立金を口座に入れておくより、上手な運用で増やすことができるのです。管理組合としては面倒かつ不安な積立金管理を行わなくてよいばかりか、運用もできるとあって最近では利用するマンションが非常に多くなっています。

マンション共用部分のリフォーム

新築分譲のマンションも年を経れば必ず老朽化し、美しかった共用部も汚れたり傷んだりするもの。20年以上も経てばそろそろリフォームの必要性も出てきて、住民からもそういった声が挙がってきます。しかし、修繕積立金は大規模修繕の計画ですでに充ててあったり、また積立金そのものが不足している場合には、融資の利用も考えなければなりません。そんな時に便利なのが、住宅金融支援機構が行っている「マンション共用部分リフォーム融資」です。

融資額は対象となる工事額の8割以内で、マンション管理センターの保証限度額(150万×住宅戸数)以内とされています。融資の金利は耐震改修工事以外の場合で2.15パーセント、耐震改修工事を伴うリフォームなら1.95パーセント。返済期間は1年から10年の間で選べ、住人が保証人となったり担保を出したりする必要はありません(マンション管理センターが保証人となる)。保証人となるマンション管理センターに対する保証料は必要になりますが、保証料は

(補償金額÷10万)×(上の保証期間に応じた10万円当たりの保証料)

で、そう高くはありません。例えば、一般管理組合で融資額が3,000万円、返済期間が10年の場合、

保証料=(3,000万÷10万×2,986)=895,800円

管理組合としては、総会の決議がなされていれば手続きは簡単に済み、工事着工後に融資が行われる仕組み。なお、リフォームの着工は融資決定後でなければできませんので、その点は注意が必要です。融資金は月2回機構が定めた日に管理口座に振り込まれます。

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